所有効果の内訳
所有効果の内訳
持ってるもの(色々な意味)に対して実際以上の価値を感じてしまう、あれ。
人間心理ってのは色々絡んでいるもので、所有効果と一口に言っても、得よりも損のほうがキツイってバイアスとかとかも関わってくるので、おもしろいよねえ。
早速話がズレるけど、損するときの心理的ダメージは、大きさよりも回数によって認知されるらしいので、ドカンと一発損するよりも、じわじわ損するほうがキツイらしい。
これだけでも示唆に富んだ話だね。
おそらく思いだす回数が関係してるんじゃないかな。
(ズレにズレを重ねると、犬猫は一回の食事量じゃなく、食事回数で自分の食べた量を認識しているらしく、ダイエットする際は少量を何回もあげるといいらしい。なんだか、人間にも同じようなダイエット法があったような 笑)
年一回支払う数万円の保険料よりも、毎月支払う数千円の新聞代のほうが嫌なのはこのためなんだろう。(僕だけ?)
話を戻して、所有効果を示すおもしろい実験があったので紹介しよう。
行動経済学者のダン・アリエリー氏がアメリカのデューク大学の学生を対象にした実験で(出典元をこんな風に言うとDaiGoみたいでしょ!しかし、デューク大学だったかどうかはイマイチ定かでない 笑)
アメリカ人って、バスケ好きじゃん。
大学のバスケチームの試合を見るのにも、莫大なコストを使う人種がいるわけよ。
そうすると、その気持ちを利用して金儲けを考える奴らも出てくる。転売屋だ。
運営側も本当にバスケが好きなやつにチケットが行きわたるように、チケット購入のコストをとにかくあげる。
鐘が鳴る度に、一度運営テントに顔を出さないと並んだ列の最後尾にまわされる、とか。その頻度が試合二日前だと、15分おきだったかな?
僕だったらいくら好きでも諦めるね。
しかも、そんなに苦労したあげく抽選だったりして!
それでも並ぶなんて!そうまでしてバスケが見たいのか!
そんで、被験者はチケットを勝ち取った学生たちと、逃した学生たち。
どちらも学業、プライベートともに多大な犠牲を払った学生たちだ。チケット購入における機会損失は等しい、と言える。
・チケットを購入できた学生たちには、手に入れたチケットをいくらでなら売れるか。
・購入できなかった学生には、チケットを手に入れるためにはいくら支払うか。
を、あたかも転売屋のように聞いてまわったそうな。
また脱線。質問者が心理学者だった場合とそうでない場合では、回答に差が出るっていう、皮肉みたいな、DaiGO風に言うとシュールな実験結果があるのだけど、この実験デザインでは、多少それは回避できているのかな。
実験ぽくないし。
勘の良い学生は、何かの実験かなって思うかもだけど。
戻る。
それぞれの平均の差は、なんと14倍もあった!
行列に並んでいたときは、等しい熱量でチケットを欲していた学生たちが、持つ者と持たざる者となった途端、主観的な価値にこんだけ開きが生まれてしまったのだ。
10000円なら買いたいという100人と、140000円なら売りたいという100人がいたってこと。
どうしてこんなことが起きるのか。
それは、学生たちの値付けの根拠で判明する。
買う側の学生(チケットなし)
「10000円あれば、スポーツバーで試合を無料観戦しながら、ビールとおつまみを食べられる上におつりがくる。それ以上は流石に出せないかな。」
売る側の学生(チケット有り)
「デューク大学のバスケクラブの試合を生で観戦できるなんて、貴重な体験だよ。友人だけでなく、将来孫にまで自慢できる。いくらお金を積まれても売る気はないよ」
買う側の学生(チケットなし)は、チケットを手に入れるための犠牲(コスト)を見ていて、
売る側の学生(チケット有り)は、チケットを所有していることで生まれる価値を見ている。
この違いが価格の差に反映されているわけだ。
従来の経済学では、こういうことは起きないと想定されている。
人々はしっかりと、チケットの客観的な価値を理解し、市場価格は安定するはすだ、と。
しかし、この実験で生まれたローカルチケット市場に見えざる手が介入したとすれば、売りたくもなければ買いたくもない市場価格が生まれることになる。
それっておかしくね?と生まれたのが、行動経済学って分野なんだ。(独自解釈)
以上、所有効果の内訳でした。
この記事に書いたことは、これ↓に書かれておった。
カチっとした本じゃなく、身近で起きることを行動経済学の知見で説明してくれるような、へー!おもしろい!となる読みもの。